白くけぶるような雨だった。
排気ガスをたっぷりと含んだ灰白色の空もコンクリートの街も、なにもかもを包んで降りしきる雨は、一時こうして傍観すれば幻想的にさえ見えた。
だが、実際は六月も終わりの熱気を含んだ纏わりつくような雨で、不快指数も80%を超えるに違いない。
大多数の若者は、そのぶしつけと無作法を天真爛漫のつもりでいる……と言ったのは誰だったろうか。

「やっべぇ、この靴もう無理」
「お前、ここで靴下脱ぐなよっ」

夕食には少し早い午後のファミレスに、ジャージ姿の学生たちのドヤドヤとした喧騒が満ち溢れた。
ステーキがメインのこの店にいたのは、遅い昼食を摂っていたサラリーマンと、コーヒーを頼んで雨宿りしていたらしい数人の客だけで、一様に眉をしかめて睨みつけてきた。
それをものともしないのは若さゆえなのだろう。

「やだ、ちょっと濡れたバッグ置かないでよねっ」
「あ?」

仁王立ちしているのは、我がバスケ部マネージャーの小野栞里(しおり)だ。

「だったら、そっち座ればいいだろ?」

向かいの席を顎でしゃくると、「悪い、俺ここ」とすかさず滑り込んできたのは亘(わたる)だ。
チッと軽く舌打ちして、青山蒼穹(そら)は渋々スポーツバッグを足元に下ろした。

「ん」

腕組みして仁王立ちしていた栞里が顎をしゃくる。

「あ?」
「濡れてる」

栞里の視線は、今しがた蒼穹が濡れたスポーツバッグを置いた席に向けられていた。

「………」

こいつ、何様のつもりだよ? と少々カチンときつつも、蒼穹はバッグからタオルを取り出すと従順に拭き始めた。





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